松ヶ枝国際ターミナル、軍艦島へ向かう船の発着点が港の風景を創る国道499号沿いに寄棟平屋建てが佇む。
屋根に設けられたドーマ窓は西欧の設計思想が持ち込まれていることが分かる。一方で建物左右に設けられた破風は日本の建築様式である。西欧と日本の建築が融合しながらも落ち着いた印象を抱かせる。設計がなせる業なのかもしれない。
正面に立つと建物は左右対称であることが分かる。黒っぽくくすんでいるが、元の壁は白壁であったと思われる。税関の派出所として建てられたらしい。
文化庁のサイトによれば、煉瓦造とある。窓の下、腰高の位置から基礎部分までは赤煉瓦が積まれている。腰から上も煉瓦が積まれているとなれば、表面は化粧していることになる。背後に回ると赤煉瓦の塀がある。年月を重ねた表情の煉瓦はオランダ積されているように見える。
掲示板に歴史が書かれている。近代化する日本の交易を支えた長崎、税関はその一日一日を見つめてきたのだろう。今も税関は地道に仕事と向き合っている。
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旧長崎税関下り松派出所
長崎市松ヶ枝町4番33号
長崎市HP
国重要文化財
竣工:1898年
現在:長崎市べっ甲工芸館として活用(入場料100円)
撮影:2017/9/30