大浦天主堂

長崎港を臨む南山手の賑わいが凪のように静まる場所がある。大浦天主堂だ。石段を登っていくと、遥かにそびえる塔が、荘厳な空気が、訪れる者を沈黙させる。
白い壁はところどころ黒ずみを隠せないが、長崎港を見つめるように立つ姿は、150年もの時を重ねてきたことが信じられないほど、威厳に満ちている。





天主堂が建つ敷地は狭い。眺め上げれば、おのずと真上を見ることになる。建物の周りには石が敷き詰められている。石畳だ。
右へ回ると、天主堂の屋根が日本瓦であることがわかる。天主堂に連なる倉庫のような建物の壁には直径1mほどの丸い窓が設けられている。巧みな形状の装飾が施されている。天主堂の側面上部の壁にも、装飾をあしらった窓が設けられている。




グラバー園から見た屋根部分だ。1月ほど前に撮影した1枚。正面から見る印象とは異なる。



入口の天井は複雑なカーブを描くドームのような造りで、グレーに塗られたフレームが支えている。天主堂内部は撮影が禁止されている。広い空間が迎える。やや暗い内部には木製の長椅子が並べられ、観光客は言葉を止め足を休めている。




天主堂に隣接して2つの関連施設が建っている。大司教館と旧羅典神学校だ。
大司教館はグラバー園へ向かう際にも目に留まる。イギリス積みされた赤レンガの建物だ。屋根から延びる煙突もレンガ積みだ。屋根は日本瓦で、ベランダ部分の天井は白く塗られた細い木板が菱形を描くように貼られている。一般者の立ち入りは禁止されている。




大司教館の奥に立つのは旧羅典神学校だ。国指定重要文化財である。1階はキリシタン資料館として公開されている。自由に立ち入り見学できる。また、キリスト教に関する書籍などの販売も行われている。2階、3階は立ち入ることはできない。基礎部分などにはレンガが使用されている。段差を利用した地下室もあるようだ。





150年前に建てられたにもかかわらず天主堂の意匠は、設計思想の豊かさを伝えている。


大浦天主堂
長崎県長崎市南山手町5-3
大浦天主堂HP
国宝
竣工:1864
旧羅典神学校
国指定重要文化財
竣工:1875
大司教館
竣工:1915
見学:300円
撮影:2014/11/18