坂元の棚田

日南市内から国道222号を西進すると、車窓は山々が連なる風景に変化していく。国道が日南ダムに差し掛かる辺り、道の駅酒谷が見える。その前を過ぎ右へ折れると、道は狭くやがて登り坂になる。
道には案内の札が立つ。導かれた先には駐車場がある。少し歩いていくと、石積みされた棚田が目に入る。



棚田は湾曲した狭隘な田の連なりではなく、住宅団地のように整然と整備されている。農作業に必要な道幅も確保され、上流から水が行き渡るように水路も整備されている。田一枚の広さは約5a、作業しやすい長方形だ。圃場整備そのものである。この思想が大正末期に存在していたことに驚く。



掲示によれば、この地は屋根を葺くための茅を刈る茅場だったらしい。大正末期から測量が始まり、昭和3年9月から本格的な工事が開始された。昭和8年8月、5年の歳月を重ね5.7haが完成した。田一枚あたりの面積や道幅などは馬による耕作を前提に決められたようだ。
平成12年から16年にかけては県営事業として里地棚田保全整備事業が取り組まれ、棚田の保全工事、水路工事などが実施されている。



棚田は海抜250mから300mの高地にあるが、温暖な気候をいかして稲作が行われているようだ。訪れたのは3月下旬、田植え前の田では菜の花が揺れていた。



棚田の全景は、南東部の山腹に設けられた展望所から臨むことができる。アクセス道は細く急な坂だがコンクリートが施され、木製の展望台が設置されている。


坂元の棚田
宮崎県日南市酒谷甲
棚田百選(地域環境資源センターHP)
竣工:1933/8
撮影:2015/3/21