県道側から建物の妻壁を眺めることができる。見るからに古い建物だ。イギリス積みされた煉瓦は赤色であったり乳白色であったり黒っぽかったりする。ボランティアガイドの説明によると、竣工したころは赤い煉瓦だったらしい。第2次世界大戦の頃黒い色に塗られたが、戦後乳白色に塗り替えられた。その後風雨などによって乳白色が剥がれたりして元の色が現れているのだそうだ。
関心を寄せなければ今にも壊れそうな倉庫に見える。既に100年を経過しているのだから当然であろう。しかし、屋内では現在もポンプが稼働している。一日約12万トンを送水している現役の施設なのだ。八幡製鉄所で鐵鋼生産に必要とされる水の7割を送水している。当初はエンジンポンプが設置されていた。イギリス・デビー社製であった。1950年には電動化されている。
施設の敷地はフェンスで守られているため立ち入ることはできないが、徒歩で周囲を一周することができる。建物の北面はアーチ状の窓が連続する。アーチは煉瓦で描かれ建物を印象付けている。建物の北側には池が見える。遠賀川を堰き止められて導水された水を取水する施設があるようだ。
東側の妻壁は西側と同様の意匠である。敷地の門は東側にあり、建物への入口も東側に設けられているようだ。屋根は改修されているが、壁や扉、窓などは竣工当時の姿を残そうとする気配りが伝わる。
南面は東半分が壁で西半分が連続する縦長のアーチ窓で構成されている。壁の部分は単に壁ではなく、縦長アーチ窓を煉瓦で埋めたような造形だ。
堤防道路から遠賀川を見ると薄緑色の構造物が川中に見える。取水するための堰である。間近上流に新たな堰が構築されている。やがて交代の時期が来るらしい。
ボランティアガイドの方が数名いらした。一人でお邪魔したにもかかわらず丁寧に説明をしていただいた。パンフレットには記されていないことも話していただいた。感謝だ。
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官営八幡製鐵所 遠賀川水源地ポンプ室
中間市土手ノ内一丁目3-1
中間市世界遺産推進室 093(245)4665 HP
竣工:1910年
ポンプ室建屋設計:舟橋喜一(中間市パンフレット)
送水システム設計:中島鋭治(中間市パンフレット)
八幡製鐵所関連資産
現水源地ポンプ室
敷地内立入禁止
撮影:2016/5/4