曜日を問わず観光客が押し寄せる京都。府立図書館や市立美術館が建つ場所から仁王門通を東へ進むと南禅寺に至る。
三門、本堂と歩みを進める。秋の始まりの頃、紅葉にはまだまだ早い。やや褪せた緑を眺めながら帰り道に足を沿わせていくと、緑の揺らめきの先に煉瓦造りの構造物が目に留まった。思いもよらぬ出会いに引き付けられるように駆け寄ると、美しい造形を連ねる水路橋が現れた。
構造物は南禅寺水路閣だ。1890年に竣工していることから、すでに100年以上が経過している。水路閣の上部に進んでみると、水が流れている。現役の水路橋だ。
橋脚と橋脚の間は柔らかいアーチでつながり、橋脚にも縦長のアーチデザインが取り入れられている。連続する縦長アーチの重なりは不思議な造形感と魅力を与える。
折しも和服姿の女性が歩いていた。外国人旅行者の被写体をお願いされていた。
あらかじめの知識と情報を持たずして訪れたため、目に映る水路閣の姿だけを追ってしまった。自宅に戻り調べ始めると琵琶湖疎水という明治時代の導水事業の一部が南禅寺水路閣であることが分かった。近辺には疎水事業に関する施設や建物が存在しているようである。
水路閣の傍らに立てられた説明板には、田辺朔郎工学博士により1885年に起工され1890年に竣工したこと、日本人のみで設計・施工されたことが記されている。
明治における土木技術の高さに驚くばかりである。再び京都を訪れる機会があれば、関連施設へもぜひアプローチしたい。
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南禅寺水路閣
京都市左京区南禅寺福地町
京都観光ナビ HP
国指定史跡
設計:田辺朔郎工学博士
竣工:1890
撮影:2016/10/18