嬉野温泉街を流れる塩田川に架かるトラス橋の名は嬉野橋、1927年に竣工した。シーボルトの湯はその袂にある。
2011年から2012年にかけて改修されたようだ。名村造船所が請け負っている。銀色に塗装されたトラスは7つの辺で構成される。古さを感じさせない。
鋼材にはヤワタの文字が刻まれている。八幡製鐵所が施工した橋梁であることが分かる。90年の時を重ねても現役の車道として温泉街と茶畑へ続く岩屋川内をつなぐ。
関心を寄せなければ大正生まれの橋梁が平成の交通を支えていることに気付きもしない。かつて古湯温泉と呼ばれシーボルトの湯としてよみがえった公衆浴場と嬉野橋は嬉野温泉の近代史を語る主人公のように思える。
温泉公園からは対岸に佇む井手酒造の建物が見える。はかま腰屋根、銅板葺きの庇、どこかしらモダンなデザインに惹かれる。見る限り長い年月を経た建物だと思われる。
シーボルトの湯、嬉野橋、井手酒造をしばらく眺めていると嬉野温泉を歓楽温泉と思っていた自らの先入観を捨て去らなければならない気がした。
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嬉野橋
佐賀県嬉野市下宿乙830地先
市道下岩屋線橋梁
竣工:1927年
現役の車道
見学自由
2012年改修事業者の資料
撮影:2017/10/6