既に用地は売却されたものの、正門は残されていることを知り国道207号を走る。
たどり着いた場所にはスーパーが建ち、買い物客の車が空間を埋めていた。周囲を迂回すると、赤レンガの壁のようなものを見つけた。旧長崎刑務所の正門だ。やはり、僅かに正門だけが残されていた。
正門の赤煉瓦はイギリス式で積まれている。補強でつまれたと思われる煉瓦は小口積みであった。
赤レンガの間には帯びのように石が組み込まれている。扉のアーチ部はレンガと石が交互に組み込まれている。美しい造形である。
正門の裏側に回る。外側から見るレンガ積みの印象と同様の意匠である。
表からだとさほど印象に残らなかった扉に気をひかれた。どうやら扉は当時のものがそのままのようだ。ノブの意匠などに時間を感じるのだ。無論塗装はやりなおしてあるだろうが、想像が当たりならレンガとともにこれからも保存をお願いしたい。
広大な敷地にレンガ造りの建物は多数存在したであったろう。正門を残し、そのすべてが消えていた。単に寂しい気もするが、理に従えば仕方のないことかもしれない。
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旧長崎刑務所
長崎県諫早市野中町648
竣工:1907
1992閉鎖 正門のみ保存
見学無料
撮影:2014/10/11