車庫には3つの線路が引き込まれ、出入口には3つの石のアーチが並んでいるはずだが、明らかに見えるのは向かって右のひとつのみ。手前に建設された建屋が邪魔をする。唯一見えるアーチはバランスよく美しい曲線を描いている。熊本県下益城郡などで多く見られる石橋の建設技術が生かされているのかもしれない。
熊本県のサイトによれば、用いられた石は球磨川周辺から調達されたようだ。加工が容易な性質をもった石とのことで、米倉庫などの建築にも用いられた。
屋根の先端飾りや妻壁に設けられた明り取り窓、横壁に設けられた窓の上下の辺も巧みにデザインされている。単なる車庫の意匠に留まらない。屋根には蒸気機関車の煙を逃すかのように越屋根が設けられ、機能美も備える。
石造りの車庫の北隣に転車台がある。施設そのものは1911年頃に設置されたようだ。回転部分は昭和40年頃改修されたらしい。現在も機能している。蒸気機関車の方向を変える際に使用されているようだ。
蒸気機関車は週末などに運行されている。蒸気機関車が石造りの車庫に格納された風景、転車台で回転する風景を眺めることも可能かもしれない。
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人吉駅石造車庫
熊本県人吉市中青井町326-1JR人吉駅構内
熊本県HP
竣工:1911
現役列車車庫
撮影:2015/5/4