旧鹿児島興業館

容易に鹿児島の歴史触れることのできる通りがある。鹿児島市立美術館や歴史資料館、西郷隆盛銅像などが面する国道10号線だ。
照国神社前交差点を西へ折れるとゆとりある車幅の照国通りとなる。通りの右側に面し広場がある。その一角に人影もなく規制のロープが張られた建物がある。旧鹿児島興業館だ。





黒ずんだ表情の建物は石造りで、地元の溶結凝灰岩が用いられている。第24回九州沖縄連合共進会のパビリオンとして建設されたようだ。
南東を向く正面には左右対象にポーチが設けられている。支える柱はアーチでつながれ、2階の石柵には半円を組み合わせたようなデザインが用いられている。1階と2階との間の白い漆喰のような壁の部分と2階窓の上で軒下の白い壁には、共通したデザインの飾りがアクセントを演じている。




建物左側に回ると、窓の形状が異なることに気づく。4つある窓のひとつは上部がアーチ型であるのに対し、他の窓の上部は緩いアーチを描く。建物の角には長短交互に石が積み上げられている。主体の石と色合いが明らかに異なり、違和感が残る。




右ポーチの階段手前には「東」の文字が刻まれた石がある。建物に用いられた石とは異なり表面は粗い。無造作に置かれていて、意味するところはわからない。

左側ポーチに設けられたバリケードに建物の由来が掲示されている。長い年月の流れの中で、様々に利用されてきたことが伺える。



閉鎖されて10年余りが経過、無言のまま眠り続ける石造りの建物は、暗い表情のままである。


旧鹿児島興業館
鹿児島市城山町1-5
国登録文化財
竣工:1883
規制外は見学自由
閉館中
撮影:2015/5/4