国道10号線に「歴史と文化の道」と名づけられた通りがある。鹿児島市のパンフレット、道路標示などで見かける。この通り沿いで人影を多く見かける場所がある。西郷隆盛像を正面に見ることのできる鹿児島市中央公民館前のスペースだ。
人々の視線は西郷隆盛像に注がれているが、鹿児島市中央公民館も長い歴史を刻んだ建物で、威厳のある姿を見つめる人もある。
市のサイトによれば、辰野金吾とも交流があった片岡安が設計、戦火をくぐりぬけ改修を経ながら現在に息づく。昭和天皇の成婚を記念し、1927年に鹿児島市公会堂として建築された。
3階建てで左右対称のデザインが用いられている。玄関ホールに設けられた階段塔の頂には、球状の壷のようなデザインの飾りが載っている。国道側から見る側面の窓は上部が半円形のアーチを描き、花瓶のようなレリーフがアクセントをつけている。先端は尖り、オリエンタルな印象を抱かせる特異な意匠が眼を惹く。
観音扉を開け玄関を入ると、平成2013年に行われた改修事業の説明パネルが掲示されている。外壁の補修、ホール内部の漆喰壁補修、エレベーターの設置などが施工されたようだ。
玄関を入った正面にはホール入口があり、入口上部には飾りが設けられている。ホール内部を見ることはできなかったが、展示されたパネルからホールの造りを知ることができる。
昭和初期に誕生した建物を地震国日本で現役で活用することを選択した鹿児島、その見識に敬意を覚えた。
落ち着いた色調と控えめな意匠は、見る者の心を落ち着かせる。
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旧鹿児島市公会堂(現:鹿児島市中央公民館)
鹿児島市山下町5-9
099(224)4528
鹿児島市HP
国登録文化財
設計者:片岡安
竣工:1927
現在鹿児島市中央公民館
見学は要問合せ
撮影:2015/5/4