河内貯水池・堰堤

八幡の町から県道62号を南下していくと、道は何度もカーブし上り坂となる。風景は緑に覆われた森林に急変していく。長い時間を要せずダム湖に着く。企業が所有する河内貯水池だ。




製鉄に使用する大量の水を調達するため、板櫃川を堰き止めてつくられた人造湖である。竣工し間もなく90年を迎えようとしているが、建設当時の姿をとどめているという。
緑を映した湖面は穏やかで、岸辺を周遊するように設けられた小道には散策する人々や自転車の影が見られる。


 


池は50万㎡ほどの満水時面積を有し、凝った意匠の堰堤が眼を惹く。黒い色合いの石で組み上げられた堰堤は足がすくむほど高い。堰堤の直下を覗き見ると、草や蔦に覆われた建物が見える。取水の際などに何らかの役割を果たすのだろう。



堰堤を歩くと細かい平石を無数に積み上げたデザインが随所にみられる。西洋の城のようにも見える取水塔は半円形で、曲線を描く縦長の窓、凹凸をつけた屋根の淵などが堰堤の個性を演出している。




堰堤から左岸側を見上げると、県道を越えてまっすぐに伸びる石段に気づく。上り着いた場所には丸石を鎧のごとくまとった建物が見える。柵が設けられ立ち入ることはできない。貯水池の管理用施設のようだ。堰堤の意匠とは全く異なる。扉や窓は木製のようで、風雨に耐えていることに驚く。




工場用の水を確保するための貯水池であるにもかかわらず手間をかけたデザインの数々は、現代の合理主義においては理解されない。大正期の日本はそれを許容する懐があったのだろう。


河内貯水池・堰堤
北九州市八幡東区河内1丁目
一般社団法人九州地域づくり協会HP
竣工:1927/3
社有の人造湖
撮影:2015/6/21