佐世保市相浦から船を頼り50分、黒島に着く。港から曲がりならが上る坂道を進んでいく。竹やぶや雑木林の間にわずかな畑が作られている。
道が平坦になったあたりで商店と小さい民宿に出会う。まもなく十字路、案内板が見えてくる。教会は100m先だ。道は下る。そして右手やや高い場所に教会が現れる。
イギリス積みされた赤レンガは既に110年余りを刻んでいる。見る限りレンガに真新しさはなく、長年の風雨に耐えてきたことが想像される。
入口の前に立ち見上げると、鐘塔部の高さに圧倒される。表情は豊かで、漆喰で縁取られたアーチ型のアクセントはやわらかい印象を与える。天主堂と表示された壁の直下に設けられた円窓は入口の幅に匹敵するほど大きく、建物を強く印象付ける。十字架を支える塔の上部は四角錐で、銅板で葺かれているように見える。
建物横の部分は1階がレンガ、2階が白板壁で、設けられている窓はひとつの円と上部アーチ型縦長窓2窓を組み合わせた共通性を持つ。ただ、内側のガラス模様は異なる。
祭壇が位置する南南西側に回ってみると、天主堂の印象は大きく変化する。円形を描く2階部の赤レンガと窓、そして屋根が愛らしい表情を見せる。円錐形の屋根は日本建築では見られないような瓦の葺き方で半円を整えている。1階部分は寄棟の屋根で、2階部分の円形レンガ部分と接する場所は、微妙な曲線を見事に描いている。
雨を受け止める瓦と切り離せない雨樋は銅板製と思われる。雨が集まる集水器には十字架がデザインされている。
建物の両横には入口が設けられている。シンプルなアーチを描くエントランスの奥には木製の扉が備わる。深い小豆色の扉の上部には半円を描く飾り窓が目を惹く。
躯体の隅や基礎には石が組み込まれている。黒島で手に入れることが可能な御影石を用いているらしい。
正面入口の左側に小さな建物がある。その前にマルマン神父についての紹介碑文が用意されている。神父は黒島でその生涯を終えた。人々に囲まれて写る神父の表情はにこやかに見える。
教会から少し離れた場所にカトリック共同墓地がある。神父はこの墓地に眠る。
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黒島天主堂
長崎県佐世保市黒島町3333
長崎の教会群インフォメーションセンターHP
竣工:1902(碑文にょる)
設計:ヨゼフ・フェルディナンド・マルマン(フランス)
重要文化財
所有:カトリック長崎大司教区
撮影:2015/6/6