旧門司税関

門司港レトロエリアの賑わいの中に赤煉瓦造りの建物が建つ。竣工当時の外観を復元するため、1992年から94年にかけて保存・改修工事が行われた。2013年には煉瓦の補修工事も行われた。
既に100年を越えた年月を重ねている。この間には第2次世界大戦があり、また、他の用途にも転用されるなどの歴史を刻んでいるが、この地において現存していることに驚く。





積み上げられた煉瓦はイギリス積みだ。補修されたとはいえ、美しい色合いを醸し出している。屋根は瓦葺きの寄棟で、高窓が設けられている。赤煉瓦とともに外観のアクセントを演じているのが御影石であろう。窓枠の上下やエントランス両側の屋根部などに用いられ、洋館の風情を印象付けている。
海側に回ると建物の表情は変化する。白い桟の窓が整然と並び、機能的な構造を見せる。唯一2階部と屋根にまたがり2箇所に設けられた換気口らしき部分に凝らした意匠を見せる程度だ。海に面して庭にはテラス席が用意されている。海風を肌に受けながら遠い時間と今を行き来することができる。




入場は無料だ。内部に入るとむき出しの煉瓦を目にすることができる。当時の部材が生かされたうえで、施設利用の安全性を確保するため鉄骨などで耐震補強が施されている。




展望部屋に上がってみる。深いあずき色で組み上げられたた鉄骨階段の先には、4畳半ほどの空間が待っている。洒落た窓を開け放つことはできないようだが、建設当時の風景を想像するには十分だ。
煉瓦は年月を重ねた姿が極力残されているようだ。触れることもできる。





部屋の一部には建物の歴史などを説明した掲示があり、知りたい思いを満たしてくれる。館内にはカフェや税関の展示室がある。いくつかの部屋では腰を下ろし、寛ぐことができる。



税関として利用された期間は1912年から1927年までだ。思いのほか短い。


旧門司税関
北九州市門司区東港町1-24
門司税関HP
竣工:1912/3
設計:咲壽栄一 妻木頼黄指導
施工:清水組
入場無料-税関資料展示場、カフェなどあり
営業時間:9:00~17:00
撮影:2015/6/21