宇土半島の西端に海辺公園のように整備された埠頭がある。三角西港である。三角ノ瀬戸を挟んで大矢野島が向かいに迫る。
埠頭には釣り人の姿が多数ある。埠頭は石が緻密に積み上げられ、三角西港の表情を印象付けている。130年前の施工ながら、石工技術の高さには驚くばかりだ。
郡役所に向かう階段前から海に向かい真っ直ぐに伸びた水路がある。東排水路である。見向く人は少ないが、この石造りの施設もまた三角西港の基盤を構成している。石を積み上げて三面を構成した水路と、橋脚も含めた橋が豊かな造形を見せている。
三角西港は、埠頭、東排水路、西排水路、西端排水路、一之橋、二之橋、三之橋、中之橋、後方水路が国指定重要文化財である。建物に目が奪われがちだが、足元にこそ三角西港の歴史がある。
公園と周辺には7つの建物が建っている。旧宇土郡役所、旧三角簡易裁判所、龍驤館、旧三角海運倉庫は国登録有形文化財に指定されている。
旧宇土郡役所の建物は、国道を渡った高台にあり、現在は九州海技学院として使用されている。寄棟の屋根を持ち、エントランスの水色や屋根に設けられた明り取り窓の水色が美しい。
旧三角簡易裁判所は旧宇土郡役所の近くに建つ。玄関は東を向いているため、海に背を向けた配置である。館内は裁判所に関する資料が展示され、無料で見学することができる。別棟には赤煉瓦の倉庫が建つ。倉庫内部を見ることはできないが、威厳のある表情を見せる。
高田回漕店は1902年に建てられたとされ、木造日本家屋の趣を感じ取ることができる。浦島屋は薄い鶯色の洋館で、当時の設計図を基に平成5年に建てられたものだ。
国道57号を挟んで東側には山が険しく迫っている。そのため民家などの並びは限定的である。しかし、家屋の建て方や通りの幅、水路などは計画された成果で、明治時代に生まれた港町の姿を今に残している。先人の計画力、技術力に圧倒される。
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三角西港
熊本県宇城市三角町三角浦
宇城市HP
設計:ローエンホルスト・ムルドル(オランダ人水理工師)
国指定重要文化財
埠頭など石関連施設は現役
撮影:2015/6/28