烏帽子坑

牛深港の南に下須島がある。ハイヤ大橋と通天橋がつなぐ。目指すのは島の南西、小森漁港である。漁港の手前に設けられた展望所から海の中に烏帽子炭鉱の坑口が見えるのだ。アクセス道路は狭いが、駐車場は確保されている。数台なら停めることができる。

岩礁を利用した防波堤に守られ、坑口が陸を見ている。背を丸めた狛犬のような姿の坑口は石と煉瓦で組まれ、損壊を防ぐためか金属で補強されているようだ。遠景のため坑口の規模を正しく知ることはできない。





展望所から数分で小森漁港につく。漁港は静かで賑わいとは無縁だ。一方、護岸は整備されている。港からも坑口が見える。港の一角から岩礁を伝って坑口に近づくことができる。





300mほど歩くと測量ピンがあった。ここまでが無理なく安全に近づける限界だ。展望所よりは近く、煉瓦の色が伝わってくる。背後の岩礁には石積があり、岩礁とともに坑口を守っている様が見て取れる。

坑道が海底に貫かれた炭鉱は聞いたことがあるが、坑口が海の中にある炭鉱を知らない。干満の差、台風、浸水など、海に設けられた坑口からの採炭には困難が伴ったであろう。無煙炭といわれる良質の石炭が採れたそうだが、数年間で途絶えたらしい。





採炭が行われなくなってすでに100年以上もの時間が過ぎている。進む坑口の損壊が悔やまれるが、危険と隣り合わせの海底坑道に挑んだ先人の労働に敬意を覚えた。

牛深中心部から北西へ向かうと、魚貫という場所がある。海辺に炭鉱の遺構があるらしいが、繁茂した木々に阻まれ炭鉱の遺産といえるものに出会うことは叶わなかった。




天草市のサイトにも魚貫炭鉱についての紹介は見当たらず、複数のコンクリート構造物が“らしき”想像をかきたてるにとどまった。


烏帽子坑
熊本県天草市牛深町字西田代又1103-2
天草市HP
展望所から見学可能
撮影:2015/6/28