100年を越えて役割を担い続けている河川専用隧道が唐津市にある。
煉瓦造りの隧道を流れるのは大谷川だ。宇ノ木地区を流れたのち伊万里市南波多町に源流を有す1級河川徳須恵川に合流する。
現地の掲示によれば隧道は煉瓦巻立の三心円アーチ構造で60間とされることから、約109mの延長である。隧道の上流には中山間地形に水田が広がっている。川は2つの流れが合流し隧道へと導かれている。それぞれの源にはため池があるようだ。
上流側から隧道を見ると、断面いっぱいに煉瓦が組み上げられていることが分かる。人道用の隧道のごとく威厳さえ感じる。煉瓦は色が深い。褐色を帯びたような色合いである。内部に組まれた煉瓦と下流側に積まれた煉瓦には明るい赤色のものもある。不思議だ。
隧道を形成する煉瓦は3層に重ねられ、描かれるアーチは美しい。アーチの上部には銘板が埋め込まれている。竣工の年月が明確に読み取れる。アーチの頂点には飾りのない五角形の要石が埋め込まれている。水面から1mほどの位置には左岸側右岸側ともに切り石が3つ組み込まれている。デザインのアクセントを演じている。
内部には補修の跡がある。一部には切石が積まれている部分も見られる。長い年月の間で補修を余儀なくされることもあったであろう。隧道内は人が立ったままでも歩いていけそうな高さはあるが、暗いため断念。下流側は道から眺めた。
下流側は道との高低差がかなりあり、河床へ降りることは不可能だ。安全の範囲で眺めた。茂る草木竹などで下流側の全面を眺めることはできない。見た限りでは上流側の表情と下流側の表情は同一だ。銘板、要石も同様だ。切石も入口の両岸に積まれている。煉瓦の色合いだけが異なり、一般に見る赤煉瓦だ。
地元の区が設置した掲示によれば、千々賀村民老若男女総出で事業に取り組み、2年の歳月を要したとある。村民にとって必然性と必要性を有した事業であったのだろうが、人々が思いと行動をひとつにすることの力を思い知らされた。
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大谷川隧道
佐賀県唐津市千々賀鳥越峠
竣工:1911/10/16
現役河川隧道
撮影:2015/7/12