熊本市中央区黒髪、旧豊後街道を南北に跨ぎ熊本大学黒髪キャンパスが所在する。北地区門衛所から入り校内見学を申し出ると構内駐車が許可される。
県道に面する北地区の中央に赤煉瓦造りの門が構える。旧制五高等中学校の開設に合わせ表門として1889年に竣工した。
柱は自然石と赤煉瓦を交互に組み上げ、煉瓦壁が柱に続く。
柱を支えるように奥側にも煉瓦の壁が設けられ、道路側には柱の裾に自然石が小さく積まれている。国の重要文化財で、今も熊本大学の顔として学生を見守る。
表門を入り、木々の緑が茂る道を進むと、荘厳な空気に包まれた場所に至る。旧第五高等中学校本館、現五高記念館だ。国の重要文化財に指定されている。建築面積は900㎡を超える規模で、美しい煉瓦造りの姿を現在に留める。
正面に立つと左右の構造と意匠が同様であることが分かる。館内は記念館として公開されており一般者も立ち入ることができる。
設計は文部技官の山口半六と久留正道とされる。寄棟の屋根には瓦が葺かれ、玄関上部の屋根には西洋風の避雷針が立つ。窓は長方形で木枠のまま時代を経ている。建物を一周すると、巨大な建物であることをなおさら実感する。
本館の右方向に赤煉瓦の建物が建つ。旧第五高等中学校化学実験場だ。安山岩が窓の位置に合わせ帯状に配置されている。建物のデザインを印象付けている。
建物の角は長短の石が交互に組み上げられ、強さ感じさせる。屋根には多数の煙突が立ち上がる。化学実験場ならではの姿かもしれない。建物の南側は一段高い。階段状の教室が配置されている部分と思われる。表門と同じく国重要文化財の指定を受けている。
表門を出て旧豊後街道を渡る。熊本大学南地区に入る。間もなく左先に赤煉瓦の建物が見える。旧熊本高等工業学校の機械実験工場だ。国の重要文化財に指定されている。現在は工学部研究資料館として機能している。内部には明治、大正期に導入された機械が動態保存されているらしい。
一部2階建ての建物は越屋根を設け、明り取りと換気の機能を持たせたようだ。窓はアーチ状が連続し、出入口もアーチをモチーフにした意匠が貫かれている。枠は木のまま保存されているようだ。
妻壁は東西で意匠が異なる。東側は上部に円形の窓が設けれ、その下部に出入口がある。西側の妻壁は上部に小ぶりの四角い窓が設置され、下部にアーチ状の窓と3枚の鉄製の扉があるに留まる。煉瓦壁に用いられる石は段を付けた柱のアクセントや窓の下枠支えとして用いられている。
今も大学の敷地内に所在し学生の日々を見つめる100年遺産群、時代を超えて引き継ぎ守られていることに敬意を覚える。
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熊本大学構内建物群
表門
旧第五高等中学校本館(現:五高記念館)
旧第五高等中学校化学実験場
熊本市中央区黒髪二丁目40番地1号
熊本大学HP
竣工:1889年
設計:山口半六、久留正道
国指定重要文化財
撮影:2015/8/16
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熊本大学構内建物群
旧熊本高等工業学校機械実験工場(現:工学部研究資料館)
熊本市中央区黒髪二丁目39番1号
竣工:1908年
設計:太田治郎吉ほか
国指定重要文化財
撮影:2015/8/16