
小道を挟んだ先に木造2階建ての洋館が建っている。正方形の建物だ。
箒の目が美しく入った庭に足を踏み入れる。植栽も見事に整備されている。屋根は寄棟の瓦葺で、先端には飾り屋根が葺かれている。説明板に表示された図面には煙突が屋根に描かれているが、現在の建物には見当たらない。




玄関ホールは2階建てで、五つの面で構成されている。特徴ある造形だ。1階部分は回廊する土間が配置され、窓などの建具はない。柱の飾りは控えめで、色は褪せたような淡い紫色である。

館内の廊下には赤い絨毯が敷かれ来館者を迎える。歴史資料を展示している部屋、部屋そのものを保存している部屋などが並ぶ。部屋の入口には深いあめ色の重厚な扉が備わり、時を重ねたドアノブが歴史を語る。
館内の中央部分になだらかな階段がある。2階部の各部屋も立ち入り可能だ。玄関ホールの2階部分からは桜島を眺めることができる。2階部分にも回廊が設けられ、四方の風景を心行くまで楽しめる。




建物は内側から補強されている。窓は外観の印象を壊さないように配慮した二重窓である。
紡績事業などに要した専門技術、その技術の指導にあった英国人技師たちがこの建物を宿舎とした。薩英戦争の相手国が産業振興に協力したことは、歴史の不思議でもある。
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旧鹿児島紡績所技師館(異人館)
鹿児島市吉野町磯9685-15
099(247)3401 HP
竣工:1867年
国指定重要文化財
200円
8:30~17:30
無料駐車場5台
撮影:2016/1/16