佐賀県西部に位置する武雄市、市街の南西部に競輪場がある。その側でひっそり佇んでいるのが如蘭塾だ。
文化庁国指定文化財等データベースによれば、如蘭塾寄宿舎は中国子女の留学施設として開設された。事務室や教室棟と寄宿舎、及び迎賓館で構成されている。財団法人清香奨学会の所有・管理だ。
如蘭塾は一般公開されていないが、改修工事の完了を記念し寄宿舎のみ見学できることを知り向かった。駐車場は教室棟の前に用意されている。
最も目を引くのは凝灰岩で組み上げられた玄関前の柱だ。芸術作品のように立体的だ。帝国ホテルを設計したフランク・ロイド・ライトの弟子であった設計者遠藤新の意思が現れたデザインなのかもしれない。
石の柱を抜けると右手に寄宿舎の入口がある。左手は事務室の入口だ。寄宿舎は施錠されていた。事務室に向かい見学をお願いする。
施錠が解かれ内部に入った。寄宿舎は2015年の秋から改修工事に入り、約7か月間で完了した。
寄宿舎の外壁、内部とも深い緑色が用いられている。色は、寄宿舎の入口付近の壁に残されていた色から決められたらしい。1階玄関を上がりそのまま進むと広い空間が広がる。
中央の板の間を囲むように三方に畳の部屋が配置されている。学生が寝泊まりした部屋だ。畳の間と板の間を仕切る建具はない。部屋を完全には区切らないライトの設計手法が遠藤新の設計にも現れていたのかもしれない。
玄関左手には台所と洗面所など水回りが配置されている。造り付けの棚は建築当時の材料とのことだ。
階段がある。上っていくと広間が1室ある。1階の広間とほとんど同様の造りである。窓は木枠である。今回の改修工事で木製に戻されたらしい。施工前はサッシが取り付けられていた。古い写真などから当時の形状を再現したとのことだ。窓ガラスは下2枚がスリガラスで、上2枚は透明だ。1階部分はすべての窓がスリガラスである。
玄関右手には客間のような畳の間がある。6畳間だ。どんな用途の部屋か聞きそびれてしまった。
館内には当時の写真が掲示されている。常時一般公開していただきたい歴史施設だ。
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如蘭塾 寄宿舎
佐賀県武雄市武雄町武雄4322
財団法人清香奨学会所有 0954(22)2256
木造平屋建一部2階建て瓦葺
登録有形文化財
竣工:1943年頃
設計:遠藤新
一般公開:2016/4/8~2016/5/29
駐車場あり
撮影:2016/4/8