熊本電鉄菊池線八景水谷駅から西方へ徒歩1~2分の場所に八景水谷送水場がある。水道水を配水施設へ送水するための施設だ。隣りあった場所には老人福祉センターや公園がある。
水道施設のため高いフェンスで管理され、場内に踏み入ることはできないが、フェンス越しに旧八景水谷水源地第二ポンプ室を眺めることができる。現在は水道記念館として存在している。
建物内部には以前使われていたポンプなどが展示されているようだ。水道週間などのイベントで一般公開されるらしいので、チャンスを逃さないようにしたい。
熊本市は、飲料水をすべて地下水で賄っている。水源はダムではなく井戸である。豊富な地下水は阿蘇山の火山活動と関係がある。27万年前から9万年前にかけて4回の 大噴火が 熊本市 の地層に地下水が育まれやすい環境を作り上げた。
八景水谷水源地ポンプ場には二つの施設が作られ、残っているのが第二ポンプ室である。1967年まで立田山配水池へ水道水を送水するためのポンプ室として利用された。眺める限り、戦前からある建物には見えない。改修されたのだろう。躯体は煉瓦で、オランダ積みされているようだ。
東西と南から眺めた限りでは南北よりやや東西が長い正形だ。入口は西側にあり、庇を支えるアーチには飾りが施されている。庇上部には丸窓がある。
一番の特徴は屋根だ。青い色を帯びた薄い緑色で、塗装されてから長い年月は経過していないように見える。上部は緩いアーチを描くが裾の部分は反った形状である。この意匠が建物を強く印象付ける。屋根そのものは寄棟のよう にも見える。屋根の上部に突起した部分が2つある。役割は不明だ。
南側から眺めると縦に細長い窓が4列並び、中2つの窓の上部には明り取りのような小窓が2つ並ぶ。窓は石の淵に囲まれる。赤煉瓦と石、屋根の色が大正モダンを演出する。小窓の上部には菱形の飾りが埋め込まれている。どことなく、人の顔のようにも見える。
東側の表情は南側の意匠と同じ窓の構成で菱形の飾りがないだけである。煉瓦はところどころに補修の痕跡が見て取れる。竣工後すでに90年が経過している。改修を重ね大切に保存されているようだ。
老人福祉センター側のフェンス手前には水道記念館を説明したプレートがある。同じ内容記述したプレートは、建物の入口前にも設置されている。
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旧八景水谷水源地第二送水ポンプ室
熊本市八景水谷1-7-3
熊本市上下水道局経営企画課 096(381)4330 HP
現:水道記念館
煉瓦造平屋建
国登録有形文化財
竣工:1924年頃
フェンス越しに見学可能、敷地内立ち入り禁止
撮影:2016/4/10