熊本県八代市日奈久温泉の一角に木造3階建ての温泉宿がある。金波楼だ。
その名のように楼閣を想像させる堂々たる姿である。7年前、国の登録文化財に指定された。
2016年4月14日・16日の熊本地震の影響が心に留まり、尋ねた。
通りから眺めると窓枠は木が維持されていることに気付く。現代風の造形を見つけることはできない。
玄関を入ると広い空間が迎える。渋く輝きを放つ梁や壁板、廊下は、渾身に手入れされていることを容易に連想させる。
土間には青い陶板が埋め込まれている。1階浴場手前にある洗い場の床にも同意匠の青い陶板が埋め込まれている。
帳場から奥へ進むと階段が目に留まる。手すりを支える小柱の意匠にモダンを感じる。
廊下は庭を囲むがごとく三方に走る。透明のガラス戸は木製の枠で、庭の眺めを邪魔しない。
廊下をゆっくり進むと、壁や欄間に組子細工が施されていることに気づく。控えめだが、じっくりゆっくり眺めていると、細部に拘りを有した建築物であることが伺える。
庭は小規模で奇抜さはない。必要以上に人の手を入れず、自然の趣を大切にしているようだ。
熊本地震の影響を尋ねた。白壁にクラックが入るなどの被害はあったが、建物自体に甚大な被害はなかったとのことだ。
2013年3月、立寄り湯で尋ねている。その際の記事はこちら。
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金波楼
八代市日奈久上西町336-3
0965(38)0611 HP
国登録文化財
木造3階建瓦葺
竣工:1909年
現温泉宿
立ち寄り湯可
撮影:2016/4/30