眼鏡橋(諫早公園)


諫早駅の東側、整備された広場から南東へ10分少々本明川に沿うように歩くと、右手に緑のエリアが見えてくる。諫早公園だ。

公園には水が引き込まれ池が設けられている。眼鏡橋はこの池に架かるが、竣工のときからここにあるわけではない。

眼鏡橋は昭和33年(1958年)、重要文化財に指定されている。掲示板によれば、昭和36年(1961年)に本明川から移設されたとあるから、重要文化財指定後、現在の場所へ移設されたことになる。


重要文化財に指定された後の移設には学術的な見地からの助言を踏まえ、綿密な計画が練られたであろう。移設の判断に際しては、関係した当事者でなければわからない心労もあったに違いない。

本明川に架かっていた当時の写真が掲示板に載せてある。60年強前には面前の川にその姿があった。架かっていた場所は現在地から450mほど下流、割烹北御門の前あたりだったようだ。


移設の発端は、昭和32年に発生した水害、死者行方不明者630名の被害をだした。川幅を広げる計画が持ち上がり、眼鏡橋の撤去が必要となった。爆破撤去の案もあったようだが、現在地への移設となった。


眼鏡橋は1893年(天保10年)に完成しているから、183年のときが経過している。今も眼鏡橋は徒歩で渡ることができる。階段があり、幅は5.5mある。現在の住宅地では4m幅員の道路が必要とされるから、竣工当時としてはかなり広い橋だったに違いない。


ふたつの湾曲で描かれる弧は優雅で、美しいとさえ感じさせる。組まれた石が生み出す模様が優美さを増しているのかもしれない。完成当時の日本で最も長い石橋だったらしい。

実用性と美を兼ね備えた江戸時代の石橋、効率性を求め遊びを許さない現代では生まれない美かもしれない。

眼鏡橋
長崎県諫早市高城町(諫早公園)
重要文化財
見学無料
駐車場あり(無料)
撮影:2022/10/10